TOP > リウマチ科・膠原病

膠原病

膠原病と類縁疾患Collagen-disease & affinity-disease

膠原病とは、原因不明の発熱、関節痛や筋肉痛、筋力の低下、発疹や紅斑、レイノー現象(冷気や冷水により指先が白色や紫色に変化する)などの症状が出現し、全身の諸臓器が侵される自己免疫疾患と考えられています。
代表的な疾患の特徴を説明します。

全身性エリテマトーデス(SLE)

発熱や倦怠感とともに、皮膚や関節、全身の臓器に様々な症状が現れます。10〜30歳代の若い女性に多く(男女比1:9)、紫外線暴露や風邪などのウイルス感染、妊娠、出産、薬剤などが誘因となり得ますが、明らかな原因は不明です。

  • 原因不明の発熱が続く
  • 頬から鼻にかけて蝶形紅斑とよばれる皮膚症状が特徴的
  • 日光に当たった部分が真っ赤になり、時には痒みや水泡を伴う(日光過敏)
  • 脱毛
  • 口腔内潰瘍(比較的痛みを伴わない)
  • 移動性の多関節痛(リウマチとは異なり、関節破壊を伴わない)
  • 臓器障害:胸膜炎や心膜炎、白血球減少や溶血性貧血などの血液障害、腎障害(ループス腎炎)、痙攣やうつ状態などの神経障害(CNSループス)

シェーグレン症候群(SjS)

40〜60歳代の女性に多く(男女比1:14)、眼や口腔内の乾燥症状を主体としますが、全身の外分泌腺も障害されます。シェーグレン症候群単独の原発性と、関節リウマチやSLEに合併する二次性とに大別されます。また、乾燥症状主体の腺組織に限局するタイプと、間質性肺炎や腎障害、四肢麻痺などの神経症状、リンパ腫などの合併症を併発する腺外型があるため、注意が必要です。

  • 「涙がでない」「眼がごろごろする」「まぶしい」「眼がかゆい」などの眼の乾燥症状
  • 「唾液が出ない」「喉が渇く」「食べ物が飲み込みにくい」「虫歯が増えた」などの口腔内乾燥症状
  • 顔面や躯幹、上肢に軽度隆起する環状紅斑が特徴的
  • 移動性の多関節痛
  • レイノー現象
  • その他、鼻腔の乾燥による鼻出血、膣乾燥による性交不快感など

強皮症(SSc)

皮膚のみに硬化が起こる限局型と、皮膚や内臓が硬くなり年余に渡り進行していくことで肺や腎臓などの臓器障害をきたす全身型の2つに分類されます。
男女比は1:12で、30〜50歳代の女性に多くみられますが、高齢者に発症することもあります。臓器の線維化と血流障害により、様々な特徴的症状を呈します。

  • レイノー症状が初発症状として最多
  • 手指→手背→前腕→上腕→躯幹へと身体の中心部分に皮膚硬化が進む
  • 指尖部の潰瘍
  • 舌小帯の短縮
  • 肺線維症による呼吸困難
  • 強皮症腎クリーゼによる高血圧
  • 食道の硬化による逆流性食道炎

多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)

主に四肢近位筋、頚や咽頭筋などの炎症により対称性筋力低下をきたす病気です。特徴的な皮膚症状を伴う場合は皮膚筋炎と呼ばれます。発症年齢は、5〜15歳に小さな、40〜60歳に大きなピークがある二峰性を示し、男女比は約1:2です。高齢者や皮膚症状を伴う場合は、悪性腫瘍を合併することがあります。

  • 「疲れやすい」「力が入らない」「階段の上り下りがつらい」「しゃがみ立ちが難しい」などの四肢筋力低下症状
  • 頚筋の障害による「頭が枕から持ち上げられない」や、咽頭筋の障害による「物が飲み込みにくい」などの症状
  • 筋肉の自発痛や圧痛
  • 上眼瞼の腫れぼったい紫紅色の皮疹(ヘリオトロープ疹)や、手指関節背側に対称性に落屑を伴う紅斑(ゴットロン徴候)が特徴的皮膚症状
  • 関節痛や関節炎(リウマチのような関節破壊や変形は伴わない)
  • レイノー現象(強皮症のような皮膚潰瘍や手指壊疽には至らない)
  • 間質性肺炎を合併した場合は空咳や息切れなどの症状が認められる

混合性結合組織病(MCTD)

全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎様の症状が混在した病気です。男女比は約1:15で圧倒的に女性に多く、30〜40歳代の発症が多くみられます。

  • レイノー現象がほぼ必発かつ初発症状であることが多い
  • 手指の浮腫状腫脹(ソーセージ様)
  • SLE、SSc、PM/DMの混合所見:多関節痛、血球減少、皮膚硬化、筋力低下、間質性肺炎、腎障害など
  • 肺高血圧症
  • 解熱鎮痛剤使用による無菌性髄膜炎
  • 三叉神経障害

ベーチェット病 (BD)

アフタ性口内炎、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍を4主症状とする難治性の全身性炎症疾患です。20〜40歳代に発症することが多く、長期にわたって増悪と寛解を繰り返します。性差はほとんどみられませんが、眼病変は男性に多い傾向にあります。地中海沿岸から中近東、中国、日本にかけて帯状に広がっていることから、“シルクロード病”とも呼ばれており、日本では北高南低の分布です。原因は不明ですが、HLA-B51遺伝子の陽性率が高く(健常人:BD=15%:50%)、細菌やウイルス感染、その他の環境因子により、白血球の機能が異常亢進したことにより全身の臓器に炎症を引き起こします。

  • 口腔粘膜のアフタ性潰瘍:唇や頬の裏、歯肉、舌などに痛みを伴う浅い潰瘍ができる(初発症状かつほぼ必発で、再発を繰り返す)
  • 皮膚症状:
    1. 結節性紅斑(四肢とくに下肢伸側に皮下硬結を伴う赤みがかった発疹)
    2. 毛のう炎様皮疹(顔面、首や背中などに、ニキビのような皮疹で、中心に膿をもつ) 
    3. 血栓性静脈炎
    4. 「カミソリ負けしやすい」、「虫刺されが治りにくい」など
  • 眼症状:ほとんどが両側性、ブドウ膜炎が主体で、虹彩毛様体炎(前眼部型)と網脈絡膜炎(後眼部型)があります。「眼がくもる(霧視)」「充血、眼痛、羞明」などの症状が出現し、後眼部型は発作的な視力低下から失明に至る危険性があります。
  • 外陰部潰瘍:男性では陰嚢や陰茎に、女性では大小陰唇にできる比較的深い潰瘍で、痛みがあり瘢痕を残すことがあります。
  • 副症状
    1. 関節炎:手、肩、肘、膝、足首などの大関節が腫れて痛みます。指などの小関節が侵されないこと、関節の変形や強直性変化がないことが関節リウマチとは異なります。
    2. 副睾丸炎:睾丸が腫れて、痛みます。
    3. 消化器病変(腸管ベーチェット病):腸に単発あるいは多発性の潰瘍ができます。腹痛、下痢、下血がみられ、ひどい場合は腸管に穴が空いて腹膜炎を引き起こすことがあります。
    4. 血管病変(血管ベーチェット病):動脈・静脈の炎症や血栓によって、血管の閉塞や動・静脈瘤ができます。深部静脈血栓症が最も多くみられます。
    5. 神経病変(神経ベーチェット病):髄膜炎や脳炎としての急性型と、片麻痺や言語障害、運動障害のほか、認知症や性格変化などの精神症状をきたす慢性進行型に大別されます。経過の長い症例にみられやすく、男性に多い病型です。

リウマチ性多発筋痛症(PMR)

50歳代以上の高齢者に多く、発熱に伴う「全身の痛み」や「首、肩、腰部周囲の関節痛や筋肉痛」などの症状がみられる病気です。

  • 1時間以上持続する朝のこわばり
  • 発熱と全身倦怠感
  • 食欲不振や体重減少
  • 抑うつ状態
  • 炎症反応の亢進
  • 少量のステロイド剤に対する反応が良好
  • 血管炎の合併により、頭痛や視力障害を伴うことがある
上記のような特徴がありますが、基本は除外診断であり、他のリウマチ性疾患と鑑別する必要があります。また、初老期うつ病や五十肩と間違えられることもあるため、注意が必要です。

診断と治療diagnosis & treatment

それぞれの疾患の主症状と、血液検査による各疾患対応の自己抗体の存在、遺伝子検査や病理組織検査などにより確定診断を行います。

SLE→抗DNA抗体
SjS→抗SS-A抗体・抗SS-B抗体
PM/DM→抗Jo-1抗体
SSc→抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体
MCTD→抗U1-RNP抗体など


自己免疫疾患であるため、副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を併用することが必要です。ただし、確定診断のためにさらなる精密な検査が必要な時や重篤な臓器合併症がある場合、血漿交換などの特殊治療を行う際には、速やかに専門科を有する大学病院や総合病院に紹介致します。

早期診断の重要性Importance of the early checkup

膠原病と類縁疾患の多くは、厚生労働省によって特定疾患に指定される程、日常生活においてはなじみのない稀な病気です。そのため、数週から数ヶ月後にやっと大学病院で診断がつくことが大半です。また、膠原病は関節リウマチや他の自己免疫疾患との合併、悪性腫瘍などを併発することがあるため、できるだけ早く診断することが、重篤な合併症を未然に防ぎ、病気による後遺症や薬剤による副作用を軽減することにつながります。

「わざわざ大学病院に行くのは面倒だけど、思い当たることがあるので心配だ」という方は、是非ご相談ください。

リウマチチェック